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鉄板斬り回想記
フジテレビ番組
『ザ・ベストハウス123』
〜これだ! 100連発 3時間! 驚愕映像SP〜

2009/4/15 OA

田村亮さん「どのあたりで斬ったんですか?」

町井「この辺ですかね。刃こぼれは一つもないです。」
3月18日(水) ザ・ベストハウス2時間スペシャルにおいて予告した通り
平成の侍町井勲が鉄板斬りに挑戦!!


前回の鉄パイプ裁断秘話はこちら
十七番弟子宮本和典の鉄板斬り同行記はこちら
矢の居合斬り裏話はこちら
前回の鉄パイプ裁断に関して、「あんな細い鉄パイプ素人でも斬れるわ」といった心ない感想をチラホラ見かけます。「じゃ、藤安刀匠の鍛えた名刀で同じことをやってみてください。」と言いたくなります。

小学生や中学生が言うならともかく、三十超えた成人男性の中に、「鉄の塊や金庫を斬ってから斬鉄剣と名乗れ」といった発言をする方がおられたのには開いた口がふさがりません。
恐らく今回の鉄板に関しても、「あんな薄っぺらいトタンなんか、俺でも斬れるわ」と言う人、思う人が多々いることと思います。

2008年の夏だったでしょうか、同じ鉄板斬りをフジテレビ「飛び出せ空想科学」という番組でもチャレンジしていました。
この番組で鉄板斬りに挑戦された先生の動画を見た時、正直なところ「こんな薄い鉄板、自分ならもっと上手に斬ってやるよ」と思っていました。
実際にベストハウスさんから鉄板裁断の依頼が来た時、「あの先生が斬っていたのと同じ鉄板斬ればいいのでしょう? 楽勝ですよ。」と答えてしまいました。

鉄板斬りを稽古するにも、自宅にはその設備がありません。本番に備え、実際に鉄板を使っての稽古は、収録本番前日の三時間しかありませんでした。

用意されたのは幅45センチ、厚さは0.4〜0.6ミリ、の三種類が用意されました。

本番用とは別にテスト用として用意した藤安刀匠の名刀を用い、鉄板に斬り込んでみると、ペラペラだと馬鹿にしていた鉄板は物凄い難敵だということに気付かされました。少々腕に自信がある居合や抜刀術経験者がチャレンジして、半分も斬れれば大成功の部類です。

私の腕をもってしても、40センチ裁断したところで刃が止まりました。何度やってもあと5センチが斬れないのです。

ちなみに鉄板に斬り込み、鉄板に負けてしまった場合、刀はどうなるかと言いますと、ヘタが斬れば刃こぼれを起こすことは簡単に想像できるでしょうが、私が斬り込んだ場合だと、幅の広い鉄板の下の方まで斬るものですから、摩擦抵抗がものすごく、鉄板と刀が癒着しました。

簡単に言えば刀と鉄板が溶接された状態になるのです。
刀は鉄板からすぐに外れますが、刀に癒着した鉄板の一部は、削り取らない限り除去できるものではありません。
刃先は一見、1ミリ〜1.5ミリほどの小さな刃こぼれをきたしたような状態になるのですが、よく見ると刃こぼれではなく、摩擦熱によって刃が溶けているのです。流石の日本刀も熱には勝てないわけですね。

使用する刀にも限界がありますし、鉄板の数も限られているので、思う存分という稽古はできず、何度やってもあともう少しというところで刀が止まってしまう様子に、スタジオでは明日の本番中止まで囁かれました。
今回の企画のために数百万という予算がかけられています。番組からの期待も大きく、絶対に成功させなければいけないプレッシャーは、とてつもなく大きな物でした。

失敗し、刃が溶けると、違う部分で再度チャレンジし、それを数回繰り返しては、スタジオの中で研ぎ直して刃こぼれを直し… この作業が何回続いたことか… 私が単なる居合家で、研磨の心得がなければ、稽古の続行はできず、鉄板斬りはお蔵入りしていたと思います。

結果、僅か三時間の間に鉄板を斬るためのコツというものを体得し、幅45センチの鉄板は見事裁断できました。
同時に日本刀の刃を溶かさず鉄板を両断するコツも会得しました。
この短時間の間に鉄板裁断の奥義を会得したことは、自分自身でも驚く快挙でした。

スタッフと再度打ち合わせた結果、「飛び出せ空想科学」で幅40センチ、厚さ0.4ミリの鉄板を選んだのも、色々と実験を重ね、確実に裁断できる厚さと幅を算出したものではないかと判断され、ベストハウスさんも番組上失敗は許されないので、確実に裁断できるであろう40センチ幅の鉄板で本番に挑むことに決定となりました。
私個人的には実際に45センチ幅の鉄板裁断に成功しているので、幅45センチや50センチにチャレンジしてみたかったのですが、やはりここはスタッフの意見を参考に、安全パイを選ぶほうが無難ですからね。

本番での結果は、テレビでご覧頂いた通り、刃先を全く痛めることなく、鉄板を綺麗に両断することに成功しました。
振り下ろされた刀は力任せに振り下ろしたものではないことが、振り切った刀が水平にピシッと止められていた様子からご理解いただけるかと思います。刀には勢いと余裕がありましたから、本番に50センチ幅のものや0.5ミリ厚の鉄板を用いても、恐らく成功していたのではないかと思われます。

最後になりますが、私にBESTの状態で鉄板斬りに挑戦できるよう、遅い時間までお付き合いくださった、美術の方のご配慮には感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。リクエストを下さった皆様にも感謝の意でいっぱいです。
そして、簡単そうに見えるからといって、鉄板斬りを真似、刀を壊す人が現れないことを祈っています。