No.899
 
土蜘蛛図
藻柄子宗典製
Soten
縦:75.9mm / 横:72.0mm / 切羽台厚:4.4mm
重さ 103g
附属 : 桐箱
美術刀剣鑑定倶楽部鑑定書 
 
  ¥ 253,000 (税込)  

喜多川氏。喜多河とも切銘する。はじめ秀典と名乗り同人。優工である。京都の出身であるという。この一派は世に彦根彫りと呼ばれ、当時流行し広く世人に愛好された。『装剣奇賞』に宗典を喜多川氏二代目、江州彦根の人と記して、二代宗典の存在を認めているが、これは秀典を初代として、宗典を二代とみなしたものとも考えられる。とりあえず初二代同人説を採用して後学の資料の出現に待つ。また同書に「藻柄子(そうへいし)と銘す。しかるに世俗或いは誤ってモガラシと読む者あり、一笑にたえたり」と述べている。
宗典は銘文にも作位にも変化が多く、75歳以上の長寿を全うして活躍した。彦根藩の川北氏の扶持を受け後援されたと一本に記す。美濃国出身説もある。門弟も多く養成したため、後代の偽物の混入も少なくない。近江国彦根中薮住。延享・寛延頃。

この鐔は、源頼光の土蜘蛛(つちぐも)妖怪退治の話中にある、僧に化けた土蜘蛛が病床の頼光を襲おうとする土蜘蛛の名場面を、巧みな彫金技術によって一枚の鐔の中に表現している。果敢にも太刀に手をかけ退治しようとするのは、渡辺綱と坂田金時であろうか。臨場感溢れる名鐔で、耳には金覆輪がかけられている。
鐔の肉厚よりはみ出した立体的な彫りが多い宗典の鐔は、その造り込み故に人物の顔等が損なわれてしまった名品が多々見受けられる中、この鐔は健全な状態で今の時代まで残っていて大変貴重な存在と言える。