脇指 795 長曽祢興里(初代虎徹)
- Nagasone Okisato(1st gen Kotetsu)-

刃長 一尺七寸三分七厘強 / 52.65 cm 反り 二分七厘 / 0.82 cm
元幅 33.1 mm 元重 7.0 mm
先幅 物打26.6 mm  横手位置23.85 mm 先重 物打5.3 mm  松葉先5.0 mm
目釘穴 1個 時代 江戸前期
The early period of Edo era
鑑定書 特別保存刀剣鑑定書 登録 昭和26年3月24日 東京都登録
附属 ・素銅地金着はばき
・素銅地銀着はばき
・白鞘 / 継木
・金梨地変塗鞘小サ刀拵
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長曽祢虎徹は、江戸新刀の代表工である長曽弥興里の入道銘で、越前から江戸へ移住当初は、「古鉄」と称していたが、のち李広が石を虎とみて射たところ、矢が石に徹った、という故事に因んだのであろう、同音の虎徹に改めた。虎の字の最後のハネを、上に長くS字状にはね上げた銘を「ハネ虎」、乕と略字で書いたものを「角虎」と呼ぶ。興里の養子:興正も虎徹を襲名し、やや異風となるハネ虎銘を切ったものがある。

興里は長曽弥興里入道虎徹と称する江戸新刀の代表工で、現在の滋賀県彦根市長曽根において、慶長元年(1596)2月18日に出生ともいう。通称は三之丞または才一といった。関ヶ原合戦の戦火をさけて、父に抱かれ越前福井に移ったともいうが、井伊家が彦根に入場すると、強制的に長曽弥の住民たちを立ち退かせた。それで福井へ逃げ出したのであろう。福井では足羽町106番地にいたらしく、今も”虎徹屋敷”と呼ばれている。

前半生は甲冑師だったが、自ら刀銘に「至半百居住武州之江戸」と切っているとおり、五十歳くらいで江戸に出、刀工に転向した。その時期は甲冑の銘に、「乙未明暦元年八月日 長曽弥興里 於武州江戸作之」とあるから、明暦元年(1655)以前でなければならぬ。その作刀は非凡な切れ味と、見事な彫刻とによって、たちまち江戸の人気をさらい、常陸国額田藩や幕臣:稲葉正休から召し抱えられたこともある。

尚、郷里彦根に帰省して鍛刀したこともあり、今も”虎徹淬刃水”と石標のたった古井戸が残っている。江戸では初め本所割下水、のち上野池の端湯島にいたとも、神田ともいう。晩年は上野の”御花畑”付近にいたとみえ、刀銘に「住東叡山忍岡辺」と切ったものがある。入道して、初めは「古鉄」、のちには「虎徹」と称した。一心斎と号したともいうが、それを刀銘に切ったものはない。

興里は彫刻の名人でもあり、剣巻龍が主であるが、浦島太郎・大黒天・蓬莱山・風雷神などもある。切れ味は、”最上大業物”と格付けされ、「三ツ胴截断」と山野加右衛門の試し銘の入った刀もかなりある。稲葉正休が殿中で堀田大老を刺した刀は興里の作だった。新選組の近藤勇も虎徹をもとめたことは周知である。

興里の刀の特徴は、まず当時、無反りの刀が流行したので、反りの浅いものが多い。次は地鉄の杢目肌が詰まって強いこと。これは切れ味の優秀な所以でもある。刃文は互の目乱れや湾れ刃を好んで焼くが、いずれも足が入り、鋭さを感じさせる。鋩子は小丸、上品に返る。中心の鑢目は初め筋違い、のち勝手下がりとなる。銘は「興」を初め「奥」と略体に切るのでこれを「略興」とよぶ。「虎」も初めは最後の画を、上に蛇行させて跳ね上げるので、「跳ね虎」とよぶ。これに対して「乕」と略体に書いたものを、「角虎」とよんでいる。 興正は長曽弥興里入道虎徹の門人、のち養子になる。よって「長曽弥虎徹二代目興正」とも銘する。通称は庄兵衛といい、下谷池の端に居住した。刀銘には、「於豊島郡」「東叡山於忍岡辺」と切ったものがあり、元禄(1688)初期まで生存したという。その子・左市は罪を犯して刑死し、もう一人の庄左衛門は業を継がなかった。興正の作風は養父に似て、少し劣るが、切れ味は同じく”最上大業物”に列せられている。


この脇指は、元先の幅差頃好く開いて中切先。地鉄は杢目肌よく練れて少しく肌立ち、刃文は匂口明るく冴えた直刃に所々節立つ様に小さな湾れを交え、鋩子は表は直ぐ調に太い二重刃を伴い丸く返り、裏は直ぐ調にやや湾れごころを交え、砂流盛んにかかって丸く返る。
最近では刀剣乱舞にも登場するキャラクターの中に「浦島虎徹」があるが、本刀はそれと同じく虎徹の若打ちである奥里銘の貴重な一振で、昭和26年3月の大名登録初期に登録されていることからも、名のある大名家に伝わっていたことが窺える。
附属の拵は、きらびやかな金梨地塗りの変わり塗り鞘に、魚子の擦り減り具合からも察せられる製作年代遡る金具が添えられ、縁頭は秋草図の見事な仕事が施された名品である。柄は当時からよくみかけられる鮫の再利用なれど、後世に合わせられた後家柄ではなく、完全なるオリジナル。当然ながら柄にがたつきは無く、しっかりとしている。鐔鳴りあり。
切羽はオリジナルの金着せ切羽が附属したいたものの、金の着せがめくれ、傷みが目立つと言う理由から、所有者が手持ちの銀着切羽に替えていますので、新たにしっかりとした金着せ切羽の新調と合わせ、拵も特保審査受審をお薦め致します。
※拵に納める際には元々附属していた素銅地銀着せはばきをはめてください。

裸身重量581グラム。  拵に納めて鞘を払った重量840グラム。  ※委託品


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