近代化に成功してもなお、日本に独特の文化が根付いているのはなぜか−江戸時代の日本にその理由を求めて、二人のアメリカ人女性プロデューサーが組んでドキュメンタリーの制作を進めている。その撮影地に、県内では旧彦根藩の趣が残る彦根市の国宝彦根城と名勝玄宮園、旧彦根藩の下屋敷の楽々園が選ばれ六、七の両日、撮影が行われた。
題名は「ジャパン メモライズ オブ ア シークレット エンパイア 陽(ひ)いずる国日本 闇(やみ)の帝国の記(しるし)」。現在、米国のテレビ局PBSで放映中の「帝国シリーズ」の一つとして、来年末ごろに全米で放映される。
日本演出者協会初の外国人演出家で、映画や舞台、ミュージカルなど幅広い分野の企画、演出、監督を務め、女優としても活躍中のデボラ・アン・ディスノーさんと、ドキュメンタリー作家のリン・ゴールドファーブさんの二人がプロデューサー。
二人とも、それぞれ手掛けた作品が世界中で公開され、アカデミー賞にノミネートされたこともある実力派だ。
西欧にまだまだ知られていないという現代日本の姿。「鎖国で作られた行動様式が今の日本にも影響しているのでは」。日本人スタッフとうまく意思疎通できなかった経験を持つデボラさんは、制作のきっかけをそう語る。
二人は、日本人の精神や生活感覚まで映し出すことにこだわり、「臨場感や昔の人の暮らしを率直に伝えたい。日本に残る本物を見せたい」と、セットは使わず、現代に残る建造物での撮影に徹している。
撮影は今月始まったばかり。映画撮影などを誘致するため一日発足した滋賀ロケーションオフィスが、海外で放映される番組制作では初めて協力。彦根市には、日本人スタッフも含め十一人が訪れ、彦根鉄砲隊や城内の桜を撮ったほか、七日には刀研師の町井勲さん(28)=兵庫県川西市=を楽々園に招き、本物の刀での居合を撮影した。
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