12-1820
画像枚数 11枚

保存刀装具鑑定書での価格
早く売れる価格 495,000円(税込)/450,000円(税別)
妥当な価格 660,000円(税込)/600,000円(税別)
強気の価格 880,000円(税込)/800,000円(税別)
商品の出来を優先した価格 770,000円(税込)/700,000円(税別)
推奨販売価格 715,000円(税込)/650,000円(税別)

特別保存刀装具鑑定書取得後の価格
早く売れる価格 770,000円(税込)/700,000円(税別)
妥当な価格 990,000円(税込)/900,000円(税別)
強気の価格 1,320,000円(税込)/1,200,000円(税別)
商品の出来を優先した価格 1,210,000円(税込)/1,100,000円(税別)
推奨販売価格 1,100,000円(税込)/1,000,000円(税別)

波図鐔
無銘(後藤)
-Mumei (Goto)-

縦62.9ミリ 横59.4ミリ 切羽台厚4.5ミリ
重さ135.5グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱


後藤派は室町時代以来、将軍家や有力武家の需めに応じて格式ある刀装金具を制作し、良質な赤銅が生み出す深い黒色と、金銀を用いた格調高い色絵によって日本金工の中心的な地位を築きました。本品は無銘ながら日本美術刀剣保存協会によって後藤と極められ、保存刀装具鑑定書が交付された一枚であり、黒々とした赤銅地の色艶、隅入木瓜形の古典的な姿、全面へ隙なく施された波文の端正さには、同派が重んじた品位と厳格な造形感覚が明瞭に表れています。

波は寄せては返しながら尽きることがないため、永続、再生、不屈の象徴として古くから武具に好まれた画題です。本作では一つの大波だけを強調するのではなく、大小のうねりを重ねながら無数の波頭を鐔面いっぱいに巡らせ、表裏のみならず耳へも文様を連続させることで、小振りな鐔の内側に果てしない海の広がりを凝縮しています。細い毛彫を幾筋も揃えて水の流れを表し、その間から巻き上がる波頭には柔らかな肉取りを加えているため、正面では緻密な線の美しさが際立ち、斜めから眺めれば彫りの高低と耳へ回り込む文様が陰影となって現れます。

波間には金と銀の小粒を数多く散らし、飛沫が光を受けてきらめく瞬間を表しています。金銀の配置は均一な反復ではなく、波の流れや余白に応じて密度を変えており、深い黒色の赤銅を夜の海のように見せながら、見る角度によって金の温かな光と銀の涼やかな光が交互に浮かび上がります。派手な高彫や大きな据文を用いず、赤銅、毛彫、薄肉彫、金銀色絵という限られた要素だけで豊かな景色を作り上げたところに、後藤金工らしい節度と洗練があります。

小柄櫃孔は四分一で丁寧に埋められ、その表裏にはそれぞれ波上を飛ぶ鳥を彫り、眼へごく小さな金象嵌を施しています。四分一の落ち着いた灰色は黒い赤銅地と柔らかく対照し、金の眼が一点だけ鋭く光ることで鳥の姿に生命感を与えており、単なる櫃孔の補修に終わらせず、表裏で向きの異なる鳥を楽しめる独立した見どころへ仕立てた趣向が巧みです。広い波景の中へ鳥影が加わることで画面に遠近が生まれ、鐔を返した際にも物語が途切れず、海上を渡る鳥を追うように表裏を鑑賞できます。

制作年代については、無銘で個工を特定できない以上、銘年だけから断定することはできませんが、後世的な写実表現や技巧の誇示よりも、隅入木瓜形の整った輪郭、深い黒味を呈する赤銅、規律ある波線、抑制の利いた金銀色絵を重んじた作風には古様が認められます。江戸後期まで下げるよりも、江戸前期から中期頃の後藤系作品と見る方が現品の格調によく適い、昭和六十三年に交付された保存刀装具鑑定書も長く伝来してきた安心感を添えています。

縦62.9ミリ、厚さ4.5ミリという引き締まった寸法に対して重さは135.5グラムに達し、手に取れば赤銅地が惜しみなく使われた重厚な量感を実感できます。この豊かな地金量そのものが価値を支えるうえ、表裏と耳へ及ぶ精緻な波文、数多く打ち込まれた金銀の露、四分一の埋金へ施した鳥の彫刻と金象嵌、後藤極めという要素が揃い、遠目には格調高く、手元では細部をいくらでも探って楽しめる密度の高い作品です。現状の保存刀装具鑑定書付きでも十分に価値ある名品ですが、地金の質、彫金の緻密さ、意匠の完成度、保存状態を総合すれば、特別保存刀装具の審査にも十分期待を寄せられる内容を備えており、後藤金工の赤銅美と波文の魅力を代表する一枚として、長く愛蔵するにふさわしい品です。