槍・薙刀 023 壽幸
- Toshiyuki -

刃長 三寸六分三厘 / 11.0 cm 反り
元幅 26.6 mm 元重 7.3 mm
先幅 21.9 mm 先重 5.2 mm
目釘穴 1 時代 江戸後期(天保頃)
Production age 『AD1300〜1392』
鑑定書 登録 平成26年1月8日 京都府登録
附属 ・白鞘 価格 \ 275,000(税込)



柾目肌良く練れて詰み、地沸ついて精美。詳細画像をご参照ください。

匂本位の明るく冴えた互ノ目丁子乱れ。大きく硬く焼き出し、中間部は尖りごころの刃を交え、匂口平地に向かって煙り込んで沸映りや湯走りの如き態を成し、先は匂口一段と締り、足交え、覇気あって見事。詳細画像をご参照ください。

表裏乱れこんで刃中に蛇ノ目の如き刃を交えて短く返る。詳細画像をご参照ください。

見龍子壽幸は因州鳥取藩の藩工で浜辺一派。
刀の折れ曲がりや刃味に特に留意し鍛刀していた刀工で、それを証明する寿幸の手紙が遺されています。


以下寿実の手紙

去る亥の年(天保10年(1839)か?)、余、因鳥府に在りし時、秋9月、予松藩三好長之、余が未熟の業をしたいて、予松より来る。其の性質、廉直にしてつとむる事厚く、あくる年二月、長之と共に東都に下り、教示する事、前後四年、奥義を極めて帰らん事を需む。
往くも帰るも忠孝の為なれば、是を止めるに忍びず、嗚呼別離の情骨肉を裂くが如く、別れの時言うべき事を知らず。只豪を走らして迷わざる所を知らしむ。
刀剣は武士の魂にして、邪を断ち乱を治むる器なり。是を造ること常の心を以って常の刀を造るべし。
いやしくも常の心なきものは、価により相州物をも造り、又一文字をも造る。
其の造るところは自由なれども、取るべき掟なければ、後世之を鑑定するにむずかし。今常の刀を銘はば、かわらずの伝、後世に残りて目利きするに安し。ある人余に相州伝をもとむ。けれど余は性質愚鈍にして、人の好みに応ずる事あたわず。ただ鍛刀を眺め見て、その不剛不柔、実用に叶うところを鍛え、目利き者の為に迷わざるは、心を動かさざるが為なり。
世には目利きと云う者あり。其の目利き者の中にも、利鈍にかかわらず、古刀を愛して新刀は見もせざる者あり。
古きを愛するは茶器をもてあそぶに等しく、中には利欲の為に、人の所持する良刀をくさしめ、是を売らしめ、巳が所持する所の鈍刀を誉めて、高金にて薦める。
只、武士の目利きは、新古上下を論ぜず、折れ曲がりせざる所の地刃を見分けるを以って、要用の目利きとはするなり。中には鍛冶によって、自ら刀を鍛え研師に因って鉄味を試み、其の解く所利にあたりて鍛冶の肺肝を貫く所あり。
よきも悪しきも人の言うところを聞いて、その善き所を選びて是を用い、そのよからざる所は是を捨て、連年丹誠をこらして修行する時は、妙処に到る甲を割り、骨を切って折曲せざる処の元を失うべからず。目利き者の中には刀剣を造る元をも知らず、書により数十刀を見て、ようやく沸、匂、板目、柾目の地刃を覚え、巳が好む所を進むる人あり。必ず迷うべからず。
利鈍にかかわらざるの目利は多く、武用に心を用いるの目利は少なし。故に多くの武士僻者の目利きにまかせて、忠孝を戴くの刀を帯び、事に望みて折れもし、曲がりもして刀の為に負けを取らば、目利きしたる人の罪大也。
今後足下人に目利きをこわるる事あらば、新古上下を論ぜず、価を計らず、学び得たる所の利鈍を説いて、其の人の迷いを晴らし、古作の良きを見ては、黙して是を師とすべし。新古上下を論ずるは、僻者の目利きなり。
価を計るは商家の目利きなり。刀は骨を切り、甲を裂くの器なれば、一研ぎにても肉を減らさざるこそ、要刀とはするなれ。
既に送る所の十か条は、新古の折れやすく曲がりやすきの内を選びて、数年穿鑿(研究研鑽の意)したる処の秘書なり。 必ず僻者の目利きに迷うて地鉄、焼刃に苦しむ事なかれ。唯相伝する処の十か条に因って、邪欲を捨て正直の心を持って、武用専一の刀を鍛はば、自然と上作の要処に至らん。
余が志す処は青江の地鉄を鍛え、備前の刃紋を焼き、関の剛にして曲がらざる処を主とするなり。
青江を好むは其の鍛うる所、細かくして実あるが故なり。備前の刃紋を移すは、火の軽くして折れざるが故なり。
関の鉄質を学ぶは、曲がらざるためなり。心を直にして丹誠をこらさば、天然と文質の兼備の良刀とはなるべし。油断なく修行するにしかず。

よきも太刀 あしきも太刀の ふりなれど 拳に秀でし 太刀ぞ太刀なれ

因州鳥取藩 浜部寿幸 天保十四【1843】年九月日 寿幸妻 浜部菊女書


この素槍(直槍)は、両鎬造短寸ながらも力強く、均整のとれた体配で、精良に鍛えられた地鉄に濱部一派、ことさら壽幸らしい互ノ目を焼いており、寸法から鑑るに、十尺をゆうに超える長柄に納められていたものと推測されます。
折れず曲がらず、武士の魂に相応しい作刀に挑み続けた壽幸の、高き技量を存分に表した名槍です。


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