刀 829 無銘(満鉄刀)
- Mumei(Mantetsu) -

刃長 二尺一寸六分 / 65.45 cm 反り 三分八厘 / 1.15 cm
元幅 32.6 mm 元重 7.6 mm
先幅 物打23.8 mm  横手位置21.5 mm 先重 物打5.8 mm  松葉位置4.6 mm
目釘穴 1個 時代 昭和前期
The early period of Showa era
鑑定書 登録 平成2年1月31日 大阪府登録
附属 宣徳はばき
黒蝋塗鞘打刀拵
価格 500,000 円(税・送込)



正式名称は興亜一心刀。昭和十年代から終戦まで、南満州鉄道株式会社(満鉄)が大連で製作していました。 金属は極寒地では脆くなる特性があり、戦闘時のそうした危惧を払拭するために、巨大知識技能集団としての当時の満鉄が、独自に鋼を開発し、極寒地対応の耐寒刀として鍛えたのが満鉄刀で、その強靭さと肥前刀に迫る出来口により、当時から刀剣愛好家に人気が高かった昭和の名刀です。
戦後の日本に於いては、伝統的鍛錬法と材料(和鉄)によらないで製作された刀剣類を、昭和刀・粗悪刀と蔑称し、法的にも所持が出来ないことになっており、興亜一心刀(満鉄刀)もこの範疇に入れられているが、戦中の作刀技法は、武器としての日本刀の製造効率化を図ったものであり、それら全てを単に粗悪品として登録所持できないとする現行法は一日も早く改正されるべき問題です。
特に興亜一心刀が満鉄の鉄道レールをスライスして日本刀形状にした粗悪品だとする謂われのない噂話が、今尚刀剣愛好家内で信じられていますが、満鉄刀は甲伏せ鍛えを効率良く行うために、丸く棒状に鍛えた地鉄に穴を空け、そこに棒状に伸ばした心鉄を差し込んで打ち上げられています。
けして粗悪品などではなく、興亜一心刀の作刀技法は、謂わば新古式鍛錬法と称して良いものと私個人は考えております。

今回御紹介致しますこの刀の地鉄をじっくりと御覧下さい。入念なる研ぎがかけられていないため、地鉄は判然とせず無地風に見えますが、よくよく見ると杢目肌らしきものが見られ、総体に映りごころもあり、流石寒冷地に強い造りであると頷けられます。指裏横手下辺りには湯走が現れ、二重刃風の刃を見せています。

満鉄刀に関しては、最近、日本美術刀剣保存協会に於いても保存刀剣鑑定書を交付すべきか議論検討を招いたようで、通常ですと「作位低し」や「伝統的な製作技法ではない」と注釈をつけて保存審査不合格になる興亜一心刀の中、「伝統的な原材料や製作技法のものであるか否か研究の余地がある」として保留となった作を、当店ホームページでもご紹介したばかりです。
本刀は登録するに当たって無銘に加工されたものと推測され、銘が損なわれたことこそ惜しまれるものの、こうして現在にも生き残らせてくれた登録者には感謝の念に絶えません。
満鉄刀の地刃を存分に楽しんで頂くためにも、是非とも入念なる研磨を施し、末永くお膝元に置いて頂きたい昭和の名刀です。
但し、記述しました所感はあくまで店主 町井勲一個人のものですので、幕末肥前三名工の作である可能性もございますことお含みおきください。

附属の拵は、柄を蛇腹巻に仕上げた高級品で、縁頭の彫りも丁寧な仕事がなされています。

裸身重量759グラム。  拵に納めて鞘を払った重量1,031グラム。


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